「オルガンと私」 M.K.
塚口教会で礼拝奏楽の奉仕をさせていただくようになり、はや7年目をむかえました。いきなり礼拝の全てを任されるのではなく、まず前段階として礼拝後の「讃美歌をうたう会」で弾かせていただき、少しずつ心の準備をして臨んだ礼拝での奉仕でした。塚口教会での初めての奏楽は、大学院一年生の秋でした。その礼拝のことは今でもよく覚えています。何回も教会に足を運んで練習し「これで大丈夫!」と当日を迎えたはずなのに不安な気持ちでいっぱいで、「もう嫌だ!」と叫びたくなるほどでした。礼拝準備祈祷会中もドキドキしっぱなし。オルガニストの皆さんは本当にすごいな…と思いながらオルガンの前に座りました。その後は必死で一つずつ丁寧に、練習してきたことを信じて足と手を動かし礼拝を終えました。
教会の礼拝はオルガンの音と共に始まり、そして終わります。大学時代師事した佐野直子先生にいただいた言葉がいつも胸の中にあります。
「あなたが礼拝を引っ張るの、オルガニストはそういう役割なのよ」
神戸女学院大学在学中の2012年、大学二年生から始まる副専攻のレッスンでオルガンを選択しました。いつか塚口教会で母のようにオルガンを弾きたい、と小さい頃から漠然と考えていたので、オルガンを学ぶ事ができる環境に迷わず飛び込みました。そこから大学院一年生までの四年間、佐野先生に沢山のことを教わり、大学では色々な経験をさせていただきました。宗教強調週間に毎朝行われる早天祈祷礼拝での奏楽や、学生主催のコンサートにオルガン奏者として参加したり、専攻楽器であるピアノではなかなか経験出来ないオーケストラのオルガン奏者を務めたりと、どれも学生時代の大きな経験となっています。
礼拝の中で、オルガニストがどれくらいの曲を演奏しているかご存知でしょうか?大学で経験した20分ほどの短い礼拝とは違い、塚口教会の礼拝では前奏・献金中の奉献演奏に加えて、使徒信条と讃美歌を四曲(聖餐式の日は更にもう一曲増えます)演奏しなくてはなりません。礼拝に参加する側だった時は何気なく歌っていた讃美歌も、自分が弾くとなるとこんなに大変なのか、と思ったものです。ただ弾くだけではなくて、会衆の皆さんが歌いやすいように・リードするように弾くことを意識する必要もあります。心の中で歌いながら弾くようにしていますが、録音を聴くと「思ったよりも遅いかも…たっぷり弾きすぎたかな…」と毎回色々な課題が見つかります。
今、世界で蔓延している新型コロナウイルス感染症は、教会の礼拝にも大きな影響を与えています。私たちは、初めて教会に集まることすら出来ないという経験を致しました。再び礼拝堂に集えるようになってからも、讃美歌を歌う事は出来ずオルガンの音に耳を傾けることしかできません。讃美歌を一人だけで演奏することは、オルガニストにとっても初めて経験する事で、ベテランの方たちも「なんだか緊張するよね」とお話されています。このような礼拝のスタイルが早く元通りになることを願うばかりですが、その日が来るまでは、音を出す事のできるオルガニストが、会衆の皆さんと心を合わせて歌うように弾くことが本当に大切だなと実感しています。
7年目を迎えて、少しずつ心に余裕をもって礼拝に臨めるようになってきましたが、やはり鐘の音を聴くとドキドキして「よし、今日も頑張ろう!」と自分を鼓舞してしまいます。これからも、あの最初の礼拝のことを忘れず、一生懸命に真摯にオルガンと礼拝奏楽に向き合っていきたいと思います。